鬼喰
- たまはみ -
第一話 邂逅
第四章 二
ちなみに彼のご両親やご家族にはお会いしたことがないのでわからない。
彼と同じようにその存在を確認できないか、それとも既に喰われてしまったのか。
「あんたは平気なのか」
ふと気がついたように志野くんが問う。
「わたしには守護者がいないからね」
「いない?」
「うん。昔から。たぶん生まれたときからじゃないかな。そのかわりに見えるんだよね。見えないと危険だから、ってことかもしれないと最近は思うんだけど……仮説だよ。わたしの」
「それで、大丈夫なのか」
「こうやって生きてられるってことは、大丈夫なんだろう。きっと」
肩をすくめておどけて見せると、彼は何と、かすかに笑った。
気楽なひとだな、と呆れたように呟く。
その安堵の表情に、わたしはわたしのことばが彼にもたらしたものを遅ればせながら知った。
つまり、志野くんが誰かの守護者を喰う事態になっても、守護者を喰われた人間にすぐさま生死の危険が迫るわけではないのだ。志野くんが生きている人間や動物に悪影響を与えるとしたら、対象の精気を喰ってしまうことだけである。
そして精気を喰われて亡くなった二人の死因は、一方は転落による外傷であり、他方は眠りから目覚めるまで体力が持たなかったというだけで、志野くんに直接の原因があるのではない。
かくしてわたしは彼を志野と呼ぶことになった。彼は相変わらずわたしのことを『あんた』と呼んでいる。
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